作家つながり

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辻村深月 × 綾辻行人:愛が深すぎるペンネームと、奇跡を引き寄せたオマージュ

『かがみの孤城』や『ツナグ』で多くの読者の心を揺さぶる辻村深月さん。その作家人生の原点には、ミステリー界の巨匠・綾辻行人さんへの溢れる情熱があります。

小学6年生のとき、綾辻行人さんのデビュー作『十角館の殺人』を読み、ミステリ観が一新されるほどの衝撃を受けたという辻村さん。以来、熱心に作品を追い、ファンレターを重ねる間柄に。中高時代の文通や、進学を祝うサイン付きグッズが届いたエピソードは本人インタビューでも語られており、ただの読者離れした「大ファン」でした。

作家デビューにあたって付けたペンネームにも、その敬意が刻まれています。「辻」は綾辻さんから一文字を拝借し、「深月」は綾辻作品の登場人物名から——読書のいずみの対談などで、辻村さん自身がそう説明しています。憧れの名前を背負って書く、という出発点そのものが物語です。

第31回メフィスト賞を受賞したデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』には、作中に「辻村深月」という同姓同名の人物が登場します。多くのミステリ作家が自名を登場させる手法、とりわけ綾辻作品などに慣れ親しんだ仕掛けへのオマージュとして知られ、「自分が大好きだったやり方を、デビュー作でもやりたかった」という熱量がにじみます。応募先をメフィスト賞にした理由のひとつにも、憧れの作家と同じ講談社ノベルスから出したかった、という気持ちがあったそうです。

さらに「奇跡の連絡」は、正式な受賞発表の前に訪れます。結果待ちの頃、経歴を見た綾辻さん本人から「山梨出身・23歳・千葉大卒の候補者はあなたですよね?」とメール、続いて電話が——講談社の打ち合わせで有力候補と聞いた綾辻さんが旧知のファンだと気づき、連絡を引き受けた、というやり取りが本人談として残っています。「書くことは絶対に逃げないから」と背中を押された一通は、ファンと師が地続きになる瞬間でした。現在では対談集『シークレット』などで言葉を交わし、帯や寄稿を寄せ合うなど、温かい師弟のような親交が続いています。

一人の少女の「好き」が、直木賞作家を生み、憧れの作家と並び立つまでになった背景——この糸を知って読むと、二人の作品が一段深く味わえます。

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