作家の素顔

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森博嗣:『すべてがFになる』は工学部助教授の兼業から生まれた

『すべてがFになる』をはじめ、難解な科学や数学の空気を娯楽に変える森博嗣さん。あの手触りの原点は、専業作家になる前の「大学教員」というもう一つの肩書きにあります。

森さんは名古屋大学で材料・コンクリート工学などを研究し、工学博士を取得。三重大学助手を経て、母校・名古屋大学の工学部(のち大学院)で助教授を務めました。プロフィールでは当初「国立N大学助教授」などとぼかして記され、2005年の退職後に専業作家へと移行しています。

創作のきっかけは1995年の夏休み。処女作を約1週間で書き上げて投稿し、編集部の反応を経てシリーズが育っていきます。講談社がメフィスト賞を創設した際、『すべてがFになる』が第1回受賞作となり、1996年にデビュー。大学勤務と並行してハイペースで作品を発表し、一気に注目を集めました。

作中では電子メールやコンピュータ、専門的な会話が説明なしに飛び交い、「理系ミステリ」という呼び名が定着しました。それは演出だけではなく、実際に工学の現場と研究室を知っていた書き手だからこそ成立した空気感でもあります。

「助教授が夜に小説を書いていた」と知るだけで、犀川創平や西之園萌絵が動く世界のリアリティが一段くっきりします。論理の美しさと人間の不完全さが同居する森ワールドの入口として、経歴そのものが最良の注釈です。

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