作家の素顔

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貴志祐介:『黒い家』の恐怖は「元・生保マン」の現場感覚から

『黒い家』『悪の教典』などで知られる貴志祐介さん。第4回日本ホラー小説大賞を受賞した初期の代表作『黒い家』の強固な骨組みのひとつに、生命保険会社で働いていた時代の現場感覚があると、本人がたびたび語っています。

京都大学経済学部を卒業後、大手生命保険会社に入社。約8年の会社員生活を送り、30歳を前に退職して執筆に専念した——プロフィールやインタビューで繰り返し示される経歴です。生命保険という制度は、死と金と人間の欲望が交差する場でもあり、貴志さん自身「ネタの宝庫」「人間の業とつながっていて、非常に怖い部分がある」と語っています。

『黒い家』は、締切が近いなか「自分が知っていることを書く」選択から生まれたと公募ガイドのインタビューで明かされています。プロットの中枢に据えられたのは、生命保険会社の支払査定の世界。毎日新聞のインタビューでは、サラリーマン時代に実際に生命保険金狙いの犯罪に遭遇した経験が作品に生きた、とも述べられています。自傷や不正請求をめぐる神経戦まで、机上の想像だけでは届きにくい匂いが物語を支えます。

作中の若槻慎二は、生命保険会社で保険金の支払査定に忙殺される社員。顧客宅で子供の首吊り死体を発見したことを皮切りに、保険金を巡る凄惨な執着へ巻き込まれていきます。恐怖の核は怪奇ではなく、罪悪感を欠いた人間の執着と、制度・社内手続きが現場の判断を縛るジレンマ。善意で設計された仕組みが、悪意の側に利用される——その社会的なロジックがあるから、日常が浸食される逃げ場のないリアリティが生まれるのです。

超常ではなく制度と人間の欲望で戦慄させるスタイルは、のちに「日本型サイコホラー」として語られる入口にもなりました。生命保険という身近な組織の内情と、そこに持ち込まれる生々しい欲望。元社員としての観察眼を知ってから読み返すと、『黒い家』の冷ややかさが一段立体的になります。

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出典

公式・出版社系の公開情報を参考にしています。詳細は各リンク先でご確認ください。

  • 公募ガイド(Koubo) 貴志祐介インタビュー:ストーリー構築術

    https://koubo.jp/article/29734

    『黒い家』は締切が迫るなか「自分の知っていること」を書いたこと、生保勤務がネタの宝庫だったことなどが本人談として紹介されています。

  • 毎日新聞 貴志祐介インタビュー(2025年)

    https://mainichi.jp/articles/20250424/k00/00m/040/029000c

    生保に約8年勤務したこと、実地で生命保険金狙いの犯罪に遭遇した経験が『黒い家』に生きた、との本人談。

  • WEB本の雑誌「作家の読書道」 第77回・貴志祐介さん

    https://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi77.html

    ホラー小説大賞への応募経緯、『黒い家』受賞前後の創作環境などが語られます。

  • KADOKAWA 『黒い家』(角川ホラー文庫)作品ページ

    https://www.kadokawa.co.jp/product/199999197902/

    第4回日本ホラー小説大賞受賞作。保険金支払査定員が主人公のあらすじと著者プロフィール。

  • KADOKAWAグループ 貴志祐介プロフィール掲載記事

    https://group.kadokawa.co.jp/information/promotional_topics/article-10411.html

    京大経済学部卒、生命保険会社勤務後の作家転身と、『黒い家』大賞受賞が公式トピックスで紹介されています。

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