伊坂幸太郎 × 阿部和重:現代トップ作家ふたりが挑んだ、奇跡の「完全合作」

エンタメ小説界の人気作家・伊坂幸太郎さんと、芥川賞作家・阿部和重さん。文脈も作風も異なるビッグネームがタッグを組み、数年の歳月をかけて生み出した長編が『キャプテンサンダーボルト』です。この作品の凄みは、話題の名前並び以上に、前代未聞の「作り方」にあります。

共著と聞くと、「奇数章はA、偶数章はB」「登場人物ごとに担当を分ける」といった分担執筆を想像しがちです。ところが二人は、どちらか一人が書いたようにも読める“ひとつの文体”をつくることを目指しました。全体構成を話し合い、章ごとに仮の担当で下書きを進めつつ、もう一方が徹底して書き直し、さらに打ち返す——最終的には章の区切りを越えて全文を互いが推敲する、という作業を繰り返したと対談で語られています。

文藝春秋「本の話」のインタビューでは、伊坂さんが当初「章ごとにバラバラ」で読者にも書き手が分かるイメージを持っていたのに対し、阿部さんが「全体の文体考えないとね」と切り出し、作風を本気で混ぜる方向へ進んだ経緯が明かされています。「一文の中に、僕と阿部さんが手を入れています」との発言もあり、読者が「ここは伊坂/阿部」と切り分けにくい融合体になったのがポイントです。

物語は、小学校以来の悪友同士(一攫千金を狙う男と、家族を抱える男など)が、巨大な陰謀や謎の感染症に巻き込まれていくノンストップ・サスペンス。伊坂作品らしい軽妙な会話と伏線の疾走感、阿部作品らしいディテールと社会・土地の手触りが互いに響き合い、「人気作家コラボ」の話題性を超えたクオリティとして本屋大賞ノミネートなどでも注目されました。

きっかけは2010年、伊坂さんが阿部さんの『ピストルズ』に帯コメントを寄せたこと。互いの小説や趣味を語り合ううちに合作へ——構想から刊行(2014年)まで約4年。多忙な一線の作家が互いのスタイルをぶつけ合い、削り合い、一冊を編み上げる制作背景を知ってから読むと、ページの端々の熱量がより濃く感じられるはずです。

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