恩田陸:『蜜蜂と遠雷』は浜松のピアノコンクールに4回通った12年の結晶

直木賞と本屋大賞を同時に受賞した『蜜蜂と遠雷』。国際ピアノコンクールを舞台にした群像は、天才の閃きというより、長い時間をかけた現場観察から立ち上がっています。

恩田さんは、音楽小説を書きたいという思いを長く抱き、中でもピアノを題材に据えたいと考えていました。構想のきっかけのひとつとして語られるのが、浜松国際ピアノコンクールでの敗者復活的な出場から上位に食い込んだピアニストのエピソード。そこから「コンクールを小説で疑似体験できる物語」への関心が深まっていきます。

完成までに約12年。そのあいだ浜松のコンクールへは4度足を運び、予選から本選まで、朝から夕方まで座席に身を沈めて演奏を聴き続けたといいます。バックステージ潜入というより、「聴く」ことそのものが取材——幻冬舎plusなど本人寄稿でも、編集者に呆れられつつ通い続けた様子がユーモア交じりに綴られています。

作中のプログラム選定にも時間がかかり、登場人物ごとに「この場面ではこの曲」と決めてから、書く前に繰り返し聴いたとインタビューで語られています。章タイトルに実際の曲名を織り込むなど、耳で蓄えた感触が本文の骨格になっています。

才能の賛美ではなく、才能という言葉が持つ蜜と毒まで描き切れたのは、机上の知識ではなく会場の空気を何度も吸ったからだと言えるでしょう。知ってから読むと、コンクールの緊張と余韻がページの間に残ります。

この豆知識、どうでしたか?

1タップで残せます(端末にだけ保存されます)

Quick shelf

記事で触れた本を、そのまま「読みたい」に残せます。購入リンクからは登録なしで楽天・Amazonへ進めます。

Start reading log

本好きの隠れ家で、あなただけの本棚を作りませんか?

メールアドレス不要・1タップで今すぐ始められます。あとから本登録すればデータを引き継げます。

登録不要メール不要あとから引き継ぎ可能

出典

公式・出版社系の公開情報を参考にしています。詳細は各リンク先でご確認ください。

Continue exploring

いま読んだネタの近くから、次の一冊や記事へ。