ペンネームの秘密

命名の秘密

有川ひろ:書店の棚で先に見つかるための「あ」と、ひらがなへの改名

『図書館戦争』や『阪急電車』などで幅広い読者に親しまれる有川ひろさん。ミリタリーと人情が同居する作風の裏には、書店で本を見つけてもらうための命名戦略と、表記へのこだわりがありました。

ペンネームの「有川」は、書店に並んだとき「あ」から始まる名前なら棚の先頭付近に来る——という実利から選ばれたと語られています。「浩」は本名から一字を抜き出し、親が喜ぶだろうと考えて付けたもの。デビュー当初から、作品の質と同じくらい「手に取られる場所」を意識していたことがうかがえます。

一方で「浩」は「ひろし」とも読めるため、男性作家だと誤解されることが少なくありませんでした。2019年2月、産経ニュースのコラムで表記を「有川ひろ」へ変更すると自ら発表。幼なじみの子どもが、作家・有川浩と身近な「ひろちゃん」を同一人物だと結びつけられず混乱している——そんなご縁を大事にする抱負のしるしとしても、改名が語られています。

デビュー作からの『塩の街』『空の中』『海の底』は自衛隊三部作と呼ばれますが、本人が自衛官だったわけではありません。漫画や平成ガメラなどへの愛着を起点に、資料を読み込み、航空祭で実機を見るなど、徹底した調べ書きでリアリティを積み上げた——作家の読書道インタビューでもその姿勢が語られています。

「あ」行の棚から始まり、ひらがなの表記で読者との距離を縮める。名前の選び方そのものが、有川作品の読みやすさと読者目線の延長線上にあるように感じられます。

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